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2003年3月22日(土)「しんぶん赤旗」

イラク問題で緊急質問

参院本会議で市田書記局長


 日本共産党の市田忠義書記局長が、二十一日未明の参院本会議で行った小泉純一郎首相への質問(大要)は次の通りです。


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質問に立つ市田忠義書記局長=21日未明、参院本会議

  私は日本共産党を代表して総理に質問いたします。

 昨日、米英軍は、国際社会と国際世論の強い反対を押し切って、イラクへの大規模な軍事攻撃を開始しました。この間、「戦争反対、査察の継続・強化による平和解決を」の声は、人類史上、かつてない規模で地球全体に広がりました。国連加盟の圧倒的多数の国々も、国連安全保障理事会を構成する多数も、武力攻撃に反対し、平和解決の道を真剣に追求してきました。米英によるイラクへの軍事攻撃は、こうした国際世論と平和解決の努力への最悪の挑戦であり、国際の法と正義に照らし、断じて容認できないものであります。

 日本共産党は、この暴挙に怒りを込めて断固抗議するとともに、軍事攻撃の中止を強く求めるものであります。

 なによりも、「武力による威嚇または武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」とうたった憲法を持つわが国政府が、この武力攻撃を支持したことは、絶対に許すことができません。

戦争を違法とした国際ルールを公然と踏みにじる

 国連憲章は二十世紀の二度にわたる世界大戦の悲惨な経験から、戦争を違法なものとし、武力の行使も武力による威嚇も禁止しました。そのうえで、自国が攻撃されたときの自衛反撃と、安全保障理事会が決定した集団的措置でおこなう場合にのみ例外として武力の行使を認めたのであります。今回の米英によるイラク攻撃は、第一に、この国際ルールを公然と踏みにじるものであります。

 ブッシュ大統領は、イラクが持っているかもしれない武器がアメリカに使われるかもしれないという二重の仮定の上に、「大量破壊兵器の武装解除のために、武力を行使する権利がある」として、みずからの攻撃を正当化しました。

 しかし、アメリカがイラクから侵略されたわけではない。攻撃も受けていない。にもかかわらず、イラクが大量破壊兵器を持っているかもしれない、その疑いがあるというだけで武力攻撃をおこない、政権転覆を謀る。これは、国連憲章が厳しく禁止した先制攻撃そのものであります。

 こんなことが許されるなら、相手の国が自分を攻撃するかもしれないと認定しさえすれば、どこの国でも勝手気ままに他国を攻撃することができることになってしまうではありませんか。

 諸国民が長い間の努力できずきあげてきた平和のための秩序を崩壊させ、世界を、いつどこで戦争が起きてもおかしくない混とんとした状態に逆戻りさせかねない許し難い暴挙であります。それとも総理は、今回の武力行使が先に挙げた例外に当たるとでも考えているのですか。明確な答弁を求めます。

 国連安全保障理事会は、今回の戦争の「根拠」となるいかなる決議もおこなっていません。これまでの決議では戦争ができないからこそ、アメリカ、イギリスは、武力行使に道を開く新しい決議の成立を執拗(しつよう)に求めたのではありませんか。

 しかしそれは、世界と安保理の多くの国々から拒否され、失敗に終わりました。ブッシュ大統領は「攻撃の正当性が問題なのではない。われわれの意思が問題だ」とひらきなおりましたが、いかに国際法上の根拠がないかを、みずから吐露したものであります。

 総理、あなたはいまになって国連決議一四四一などが「武力行使の根拠となりうる」と述べています。しかし、一四四一決議が武力攻撃を容認するものでないことは、あなた自身が国会答弁でも繰り返し述べてきたことではありませんか。国際法上の根拠のなさを自覚していながら、アメリカを支持するためならみずからの公式の発言も、国際的に確立した解釈も投げ捨ててもいいと考えているのですか。あまりにも無責任、無定見ではありませんか。

査察の継続による平和解決の努力を台無しにする

 第二は、米英による武力攻撃が、査察の継続と強化という平和の手段で一致団結して成果をあげようという、国連を中心とした世界の努力を、台無しにしてしまったことであります。

 一九九一年から続けられた国連の査察によって、相当量の大量破壊兵器が廃棄されたあと、一九九八年の米英による大規模空爆で査察活動は中断されました。そして四年を経て、アメリカも含め全会一致による国連決議一四四一によって、査察による問題解決の道が動き始めたのが昨年の十二月、つい三カ月前のことであります。

 この間の活動は、五回にわたる査察委員会やIAEA(国際原子力機関)の報告によっても、それまでの四年間とは様相が一変し、曲折はありながらも査察活動は実質的な成果を上げつつあります。そして、国連決議一二八四にもとづく今後の本格的な大量破壊兵器の廃棄に向けた作業手順と対象リストが国連安保理に提出されたのが、一昨々日のことであります。査察活動は、国連の決議に従っていま本格的な軌道に乗り始めたところなのであります。

 十九日開かれた国連安保理の外相会合では、提出された「作業計画」にもとづいて、平和的な武装解除のための努力が、いまでも続けられています。

 総理は、「フセイン政権に武装解除の意思がないということが断定された以上、私はアメリカの武力行使を支持するのが妥当」と言われました。しかし、査察をおこなってきた責任者のブリクス委員長は、ブッシュ大統領が最後通告をおこなった十八日、「査察はやめるべきではない」「査察団は、イラクが依然として大量破壊兵器を保有しているとは断定してこなかった。説明されていない事項がたくさんあると主張してきただけである」「三カ月半で査察の扉を閉ざすのは筋が通らないと思う」と述べました。

 総理、あなたが支持するアメリカなどの武力攻撃は、こうした努力を力ずくで断ち切ってしまったのではありませんか。はっきりと答えてください。

 アメリカ政府にとっては、結局、大量破壊兵器の廃棄が目的ではなく、武力によるフセイン政権の打倒が本当の目的だったということになるではありませんか。そのことは、ブッシュ大統領が開戦にあたって、「フセイン大統領父子のイラクからの退去」や「政治体制の転換」を公然と求め、それが、中東地域にとっての新しい「民主的」なモデルとなるという見通しさえ展開して見せたことにもはっきりと示されています。これは、他国の主権尊重、内政不干渉を定めた国連憲章をふみにじり、アメリカ言いなりの政権を、戦争によってイラクと中東諸国に押しつけることにほかなりません。

 総理が支持をするといった今回の「アメリカの方針」には、こうした内容が含まれていることを、どのように考えているのですか。明確に答えてください。

罪なき人々の命を奪う非人道的戦争

 第三に、この戦争は、多くの罪なき人々の命を奪い、傷つけるものであり許すことのできない非人道的戦争であります。

 報道によれば、米英軍によるイラク攻撃は、開戦から三−四日間のあいだに、湾岸戦争のときの十倍にあたる約三千発の精密誘導爆弾や巡航ミサイルによる大規模空爆が予定されているといいます。

 あなたが支持したこの戦争で、総理はいったい何人の犠牲者がでるとお考えですか。国連の報告によると、五十万人が戦闘の直接の犠牲になり、三百万人の難民・国内避難民が発生する、乳幼児とそれをかかえるお母さんなど五百万人が健康などの被害を受けるとされています。こんな戦争を「自由と平和」の名でおこなうことほど許し難い偽善はありません。あなたはこうした無実の人々の命を奪い、傷つけることに心は痛まないのですか。

 いま日本政府がなすべきことは何でしょうか。日本国憲法は、戦争放棄、武力による威嚇と武力行使の禁止を高らかに宣言し、明記しています。この、世界に誇るべき憲法九条の規定を誠実に実行し、米英に戦争の中止をよびかけるとともに、この戦争への支援を直ちに改めることではありませんか。

 日本共産党は、党創立以来八十年、侵略戦争反対を貫いてきた平和の党として、「イラク戦争反対、平和のルールを守れ」の旗を高く掲げ、国内外の平和を求める人々との共同をさらに強め、全力を尽くすことを表明して、質問を終わるものであります。


市田書記局長への首相答弁

 二十一日の参院本会議で行った市田忠義書記局長の質問に対する小泉純一郎首相の答弁(要旨)は次の通りです。

 (米国等の武力行使の法的根拠)イラクは諸義務の履行のための完全な協力を行っておらず、決議一四四一の規定に基づき、さらなる重大な違反が生じており、湾岸戦争の停戦決議六八七の重大な違反が生じていることから停戦の基礎が損なわれ、決議六七八に基づき武力行使が正当化される。このように今回の軍事行動は関連安保理決議に基づくものであり、国連憲章に整合的なものだ。

 決議一四四一自体に武力行使を容認した規定がなく、同決議に従って安保理の審議が行われたことはこれまで繰り返しのべてきた。わが国としては査察官の累次の報告等で明らかなとおり、イラクが決議一四四一で履行を求められている、武装解除等の義務を履行していないことから、さらなる重大な違反が生じているといわざるをえず、湾岸戦争の停戦条件を定めた決議六八七の重大な違反が生じていることから、決議六七八に基づき武力行使が正当化されると考えており、米英も同様の解釈をとっている。

 (武力行使による被害者)イラクにおける戦闘が一刻も早く、人的物質的被害もできるだけ少なく終結することを心から望んでいる。同時に、イラクが一日も早く再建され、人々が自由で豊かな社会の中で暮らしていけるようイラクの復旧・復興のため国際社会と協調して、できる限りの支援を行っていく。

 (わが国の対応について)わが国は、戦闘行為が現在行われているが、武力行使は行わず、また戦闘行為にも参加しない。

 (答弁のうち、査察の継続が認められなかった理由、米国の姿勢については志位委員長質問への答弁と重なるため略)