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NHKスペシャル「徹底討論」
市田書記局長の発言(大要)

2001年10月6日(土)
「しんぶん赤旗」2001.10.8(4面)



 日本共産党の市田忠義書記局長は、六日夜のNHKスペシャル「徹底討論 日本は何をすべきか―"対テロ"支援」に出演し、米同時多発テロへの日本の対応や、自衛隊派兵の報復戦争参加法案(テロ対策特別措置法案)の問題点について発言しました。出席はほかに自民党・山崎拓、民主党・菅直人、公明党・冬柴鉄三、自由党・藤井裕久の各幹事長、社民党・辻元清美政審会長、保守党・野田毅党首です。司会は山本孝NHK解説委員。

テロ勢力を国際社会が政治的に包囲

 まず、テロ根絶について日本の果たすべき役割について、与党側は「(新しい法案は)米軍支援法ととられるが、テロ根絶の国際協調としておこなわれる」(山崎氏)などと説明。司会者から「日本が何もしなくていいのかという議論がある」と問われ、市田氏は次のようにのべました。

 市田 私は大いにやるべきだと思います。いま、これほどテロ根絶で全世界が一致しているときはないと思います。

 だから、テロ勢力を政治的に国際社会が団結して包囲する、これが一番テロ勢力にとって痛いことだと思うんです。その点で、非軍事、軍事力によらない(犯人制裁のための)外交的な努力にベストを尽くすべきだと思うんです。

 例えば、政府が「ビンラディンが犯人だという説得力ある説明があった」とこの間おっしゃったわけですけど、イギリスの議会では、もちろんすべてを明らかにしたわけではないけれど、議会にちゃんと報告している。日本でもやはり国会に報告すべきだし、何よりも国連安保理事会に報告して、国際社会の共通の認識にすることが大事だと思うんです。

 やるべきことという点でいえば、例えば難民支援。きょう自衛隊機がパキスタンへ行ったけれど、あれは民間機の方が早く行けて安全だし、たくさん物を積めるし、なぜ自衛隊機を出さなければならないのか。

 (テロ集団への)資金の提供源を断つ問題とか、日本は武器輸出禁止三原則を持っているわけですから、これを世界に広げるとか、要するに軍事力によらない外交的な努力にもっとベストを尽くすべきだと思います。

 辻元氏も「アメリカは証拠を国連の場に提示すべきだ」とのべました。

武力攻撃ではテロと報復の悪循環に法の裁きこそ一番の近道

 テロへの対応について、与党側は、「外交努力をやってきたが(テロは)起きた。アメリカの個別自衛権は理解できる」(冬柴氏)などとのべました。司会者から、外交努力では現実的ではない、という指摘があると問われ、市田氏は次のように答えました。

 市田 そんなやさしいやり方で可能なのかと(いうが)、しかし私は、法の裁きを国際社会が共同して受けさせることが一番強いと思うんです。いろんな外交努力をやってきたとおっしゃったが、やってないんですよ。

 例えば、きのう(五日)の(衆院)予算委員会でも、いままでいろんなことをやってきたが、何度(国連で)決議してもなかなか身柄を引き渡さないという話がありましたが資金提供の停止処分を日本がやったのは九月二十二日でしょう。アメリカは九月二十四日ですよ。

 ようやくいま国際社会がそういう形で、軍事力によらず政治的に包囲しよう、経済制裁などをやっていこうという機運が盛り上がっているときに武力行使をやれば、そのことでかえって国際社会が不団結になって、テロ勢力を喜ばせる。

 そして、武力行使が犯人を引き出させる上で効果的だというなら、六十カ所に「アルカイダ」の拠点があるというわけでしょう。ブッシュ大統領も言っている。アフガンだけじゃないんですよ。ビンラディンがどこへ動くかも分からない。

 そうなれば、世界中に武力行使をしなければならないということになるわけで、私は際限ないテロと軍事報復の悪循環になってしまって、かえって解決を遅らす、泥沼に陥るじゃないか。弱いように見えるが、一番強いのは、国際社会が法の裁きを受けさせるために政治的に包囲して、テロ勢力を孤立させること。これが一番近道です。

兵たん活動は武力行使――「集団的自衛権にあたらない」は奇弁

 討論は、自衛隊派兵の新法案の問題に移り、司会者が「今回の自衛隊の支援は、集団的自衛権にあたらないという小泉総理の主張をどう思うか」と提起しました。各党は、自衛隊の海外派遣は「PKO法や周辺事態法で認められている」(山崎氏)、「集団的自衛権は憲法上行使できないという、政府の憲法解釈が誤り」(藤井氏)などと主張しました。市田氏は、次のようにのべました。

 市田 集団的自衛権問題ですが、日本は、戦争行動に入ったアメリカに協力はするけれども、武力行使はやらないんだからそれは集団的自衛権にあたらないと。これが予算委員会での小泉さんの答弁です。

 しかし、これほど奇弁はないと私は思うんです。物資の輸送、武器や人員や兵員や食糧や水、まさにこれは兵たん活動で、これなしに戦争なんてできない。その四つのすべてが武力行使そのものです。戦争と一体のものですよ。

 昔から、兵糧攻めといわれていたように、食糧を断てと。そこをたたけというのが、軍事も国際法も常識なんですよ。その武力行使を、アメリカと一緒にやりながら、集団的自衛権の行使にあたらないなんていうのはまったく奇弁です。それはどの地域であろうが。

 山崎さん自身が戦闘地域と後方地域を分けるなんていうのは奇弁だということを、ガイドライン(法審議)の特別委員長をやっておられて、その後の講演で、そういっておられるんですよ。それはもう奇弁中の奇弁だと。

痛苦の犠牲のうえにできた憲法は武力行使を明確に禁じている

 自衛隊派兵と日本国憲法の関係に議論がすすみ、野田氏は「自衛隊が海外における活動を前提にしていない。いつまでもそのままでいいのか」とのべました。市田氏は次のように反論しました。

 市田 自衛隊を海外にいつまでも出さなくていいのかと野田さんはおっしゃいましたけれど、私はやっぱり日本国憲法が、あの三百十万人の日本国民と二千万人のアジアの人々を犠牲にして、そういう痛苦の犠牲のうえに政府の行為として、再びああいう戦禍を巻き起こしてはならないと。武力による威嚇、武力行使を禁ずると。

 今度の事件が、犯罪か戦争かの区別は別として、国際紛争を解決する手段として、武力の威嚇、武力の行使は禁ずるというのは明確に憲法で規定されているわけです。日本の自衛隊は、戦後一人も外国の国民を殺していないんですよ。(憲法をふみにじって)それを一歩踏み出すという点で、きわめて重大だと思います。

武器、食糧輸送は単なる「配達」ではない

 討論は兵たん活動の内容に移り、山崎氏は「輸送は米軍の武器・弾薬を運ぶことをいい、補給は日本のものを提供することをいう。まぎらわしいけれど使い分けている」と発言。冬柴氏は「(武器・弾薬の)輸送は認めている」とのべました。市田氏はつぎのようにのべました。

 市田 武器も食糧も水も(司会「何もかもですか」)、それは兵たん活動ですから。これは国際的にみても、軍事の常識からいっても、それは相手の軍事目標になるんですから、それはもう武力行使と一体というのは常識ですよ。単なる配達員とは違う。  司会者が「集団的自衛権の行使は認められないという憲法解釈が無理がきているのか」と問いかけたのに対し、市田氏は「(集団的自衛権を認めるというのは)とんでもない話だと思います。日本国憲法の精神、九条に明確に違反するわけだから絶対に変えるべきではない」ときっぱり主張しました。

"地理的には無限定"と首相――世界中どこでも自衛隊が行く恐れ

 法案が、自衛隊の活動地域に、相手国の同意がある場合には他国領土も含んでいることについて、山崎氏は「(インド洋上の)ディエゴ・ガルシア(島)とパキスタンが想定されている」と発言。菅氏は「自衛隊が武器をかなりもっていかなければならないようなところに派遣することは避けるべきだ」とのべました。市田氏は、次のようにのべました。

 市田 これまで、例えば周辺事態法では日本の領土・領域と日本周辺の公海とその上空――これだって、私は建前上そうであって、全然制約にならないと思うのですけれども、それすら今度取り払って、相手国の了解があれば他国の領土までも行ける。

 きのう(五日)の予算委員会の答弁で小泉さんは、どこで戦闘が起こるか分からないから、地理的には無限定だと、世界中どこでもだとおっしゃった。同時に限定がある、それは戦闘行為が行われていない場所だ、あるいは今後行われることがない場所だと。

 しかし、どこで戦闘が行われるか分からないのに、戦闘行為が行われていない地域なんて、選びようがないわけだし、そこが戦闘が行われる地域にいつ変わるか分からない。

 そんなことになれば、例えば軍事専門家や制服組の人だって、"そんなことを言われたら、世界中を自衛隊が逃げ回っていないとならない"と。"戦闘行為でないところばかり探して、そんなことは自衛隊員としても困る"という声が出ているぐらいです。これでは、世界中に自衛隊がどこまでもアメリカが行動するところにくっついていくことにならざるをえない。

 辻元氏が、パキスタンでの難民支援を行う自衛隊が攻撃対象とされ、戦闘に至る可能性に言及したのに対し、冬柴氏は、反撃することと武力行使とは違う、と発言。菅氏は「アメリカを支援していると危険性が高まるとみられている」とのべましたが、民主党としてパキスタンへの自衛隊派遣への態度を問われ、「港まで物資を送ることはできるかもしれないが、武装した自衛隊を送ることは避けるべきだ」と語りました。市田氏は次のようにのべました。

 市田 たとえ、相手国の同意があったとしても、例えばパキスタンを想定されていると思うのですけれども、野戦病院だとか難民キャンプというのは、戦場の近くでなければ意味がないわけですよ。野戦病院が遠く離れたところだったら、その人は死んでしまうわけですから。それは常識的に考えて、野戦病院なんて戦場の間近ですよ。一番戦闘行為が起こりやすいところになるわけで、あとで武器使用の話がありますけれども、パキスタン政府自身が自衛隊の武器使用について否定的ですよ。

 そういうところでやれば、これはもう戦闘行為に入らざるをえない危険性があると。だから戦闘行為が現に行われていないというけれども、野戦病院や難民キャンプまでいくとなれば、そんな制限はまさに取り払われているのと一緒だということに私はなっていくと思う。

武器使用の拡大──戦闘行為そのものに

 議論は、同法案が武器使用の基準を緩め、自衛隊員だけでなく、「管理の下に入った者」の防護のためにも使用可能にすることをねらっている問題に移りました。市田氏は次のようにのべました。

 市田 その点については、私は反対です。麻生さん(自民党政調会長)が、バズーカ砲まで使えるようにしたらどうかということをおっしゃっているわけですね。まったく武器の種類まで無制限にしちゃって(いる)。しかも、(法案で)「自己の管理の下に入った者の生命又は身体の防護のため」にも武器を使えるということに今度は変わったわけで、そうなれば野戦病院に運び込まれた避難民や、他国軍の傷病兵もそこで自衛隊がやるということになれば、これは戦闘行為そのものになってしまうと思うんです。

 山崎氏は、「(麻生氏は)戦車が出てきたときということを(いっていた)。そういうことは戦争行為そのものであり、ありえない」などと弁明しました。

 番組では、同法案が、自衛隊を派兵する際に政府がつくる基本計画について、国会承認を必要とせず報告だけになっている問題を論議しました。

 菅氏は「事前の承認事項にし、特別の場合にはすみやかに事後の承認もあってもいい」と主張。山崎、野田両氏は、法律の国会承認そのものが、全体の国会承認である、とのべました。市田氏は、次のように主張しました。

 市田 法案そのものにわれわれは反対ですから、事前か事後かということには当然ならない。けれど、国会に事前の承認を求めないで、これだけ重大な、いわば戦後初めて公然と(戦時の)他国の領土まで、相手の同意を得た場合という条件付きであっても、そこへ行くということをやるかどうかを決めるわけでしょう。それを国会の事前の承認もなしにやってもいいんだということは、絶対に認められないです。