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川辺川ダム調査の記者会見

2001年4月19日(月)熊本県・人吉市


  1. 視察の目的
  2. 川辺川の清流と環境を守る
  3. いまこそダム建設の中止を
  4. 水没予定地・五木村の振興について
  5. 記者からの質問に答えて


 日本共産党国会議員団の川辺川ダム現地調査団として、昨日今日と2日間現地調査と関係者との懇談をおこないました。

 調査団の責任者はわたし書記局長の市田です。岩佐恵美参議院議員、大門実紀史参議院議員、記者会見にはきておりませんが衆議院議員の小沢和秋、地元の久保山・日本共産党熊本県委員長、西川えつ子熊本県委員会女性部長(参院熊本選挙区予定候補)であります。

 川辺川の清流にもふれさせていただき、ダムサイト建設予定地を、元熊本大学教授の松本(幡郎)先生の解説、説明を聞きながら、みてきました。その後、五木村に入り、村長とも懇談し、昨日の夜はさまざまな川辺川ダム反対の運動に取り組んでいらっしゃる農民、漁民、その他のいろんな団体の方々との懇談をおこないました。今日は、六角水路、灌漑排水事業の対象地となっている相良村の高原(たかんばる)地域の茶畑をみてきました。住民投票の運動をされている「くまがわ下り株式会社」の富田恵喜社長とも懇談して、日程を終えました。

【視察の目的】

 今回の視察の目的ですが、巨大開発の公共事業は、ムダと環境破壊の元凶であるわけですが、ダム建設もその一つとして大きな問題、一つの焦点になっていると思います。欧米諸国でもコンクリートのダムの時代は終わったというのが一つの大きな流れになっています。たとえば、アメリカの内務省開墾局の総裁のダニエル・ビアード氏が日弁連主催のシンポジウムにこられた際にも、アメリカ合衆国もダム建設の時代は終わったと、現に2000年5月までに469にものぼるダムが撤去された。これはヨーロッパでも同じ流れだと思います。日本の今の河川行政というのはまったくこういう流れに逆行している。

 わが党は、景気の回復と財政再建を統一してやり遂げるために、浪費と環境破壊の大型公共事業の削減に着手して、国と地方を合わせて公共事業に約50兆円、社会保障には20兆円という、ヨーロッパの資本主義国と比べても異常な公共事業優先の逆立ちした財政をただすことを一貫して主張してきました。私自身もが昨年の参議院本会議の代表質問で公共事業のあり方について、3つの提案を行いました。ひとつは、すでに完成したものについては、建設費や採算制、需要予測の当初見込みとの乖離について、調査をし国会に報告する。2つめは、事業途中や着手前のものについては、その目的、経済効果、採算性、環境などについて徹底的な見直しをはかる。3番目に、はじめに630兆円ありきの総額使いきり方式でなく、必要な事業を住民参加で積み上げる方向に切り替えるべきだということを提起しました。今年の3月には、不況打開のための日本経済の危機打開へ3つの転換を求める、「緊急経済提言」を発表しました。その中で、何よりも国民の購買力を高めるために、消費税を3%に引き下げることを中心とした提起を行いましたが、浪費と環境破壊の公共事業の削減に直ちに着手して逆立ち財政をただすという筋と論理が通った一貫した体系の中で提起していることが、経済界の一部も含めて大きな共感を今呼びつつある要因だと思います。

 そこでダム建設問題ですが、浪費と環境破壊の大型公共事業の焦点として全国でさまざまな形で反対運動が起こっていますし、長野の田中知事の脱ダム宣言をはじめとして、どこでも大きな問題になっています。これまで多くの野党が国政レベルでは公共事業の削減に言及しながら、地方自治体ではダム建設推進の立場に立っている中で、国会でも地方自治体でも大型公共事業の削減を一貫して提唱してきた党として、国会議員団を中心に手分けをして全国のダム建設の実情を調査して、各地の住民と交流し、当該の自治体とも対話をしてそれらの調査をふまえて、今日的な新しい政策提言、提起も行いたいと考えているわけですが、今回の川辺川ダム調査はその第一弾として行ったものです。

 住民の皆さんの粘り強い運動もあって川辺川の問題というのは、ムダな公共事業見直しの一つとして全国的にも注目されていますので、最初の調査地にふさわしいと考えたわけです。

【川辺川の清流と環境を守る】

 
 全国各地で河川の水質汚濁、荒廃の問題がいわれていますが、川辺川は、97年度の環境庁の調査で、全国2524水域のなかで環境基準満足度が、日本一となった全国屈指の清流であります。実際に昨日わたしたちもみてきました。その清流が、日本有数の鮎をそだて、多くの人たちが、水に親しめる要因になっていると実感できました。さきほど、「くまがわ下り」の社長さんとお会いしましたが、北海道からも川辺川の清流に直接ふれたいと観光客がくるし、なかには外国からも。まさに川辺川を守るということは、単にそこに住んでいる人間だけの任務というよりも、日本の宝、世界の宝を守る重要な課題だと思うと述べておられました。

 また、流域にはクマタカなど希少生物の生息が報告されていますし、ダムができれば、あの子守歌で有名な五木村の主要地域も水没することになるわけです。実際に五木村に行って、緑豊かな森林に恵まれた、子守歌の里、本当に守り将来の人々にも受け継いで残すべきだという感を深くしました。そもそも、川辺川ダムは環境アセスなしに出発しているわけですけれども、ダム建設が、鮎漁業に打撃を与えて、希少生物の生息を危機に追いやる。五木村の自然を永久に失う。それだけに、地域住民や漁業関係者からダム建設反対の声が高まるのは、当然だと思います。

 いろいろ懇談してみて、川辺川ダム建設反対運動の新しい局面を迎えていると痛感したのは、次の3つの問題です。

 1つの新しい局面は、2月28日に開かれました球磨川漁協総代会における、漁業補償契約に関する議案を否決したことです。3分の2以上の賛成が必要でしたがそれを許さなかった。しかし、漁業権の強制収用に踏み切るという可能性があるわけですから余談は許しません。3分の2得られなかったということで、今度は全体の総会を開いてひっくり返すと。期限は5月27日までとなっていますが、これに向けて昨日の懇談会では、現金が飛ぶという話も、漁民の方からは出されました。もし、事実だとすれば重大な問題ですし、絶対にやるべきでない。強制収用も絶対にやるべきではない。現金で自然環境守ろうとする大義と道理ある漁民や農民の心を買うことはできない、と思います。したがって、政府に対して、地域住民や漁民の意向を尊重して、強制収用などの暴挙を絶対にしてはならないと強く求めたいと思っています。

 2つ目の変化、新しい局面は、人吉市議会が今年3月の議会で、ダム本体の着工に大きくブレーキをかける環境影響評価法に基づく、環境アセスメントの実施を求める決議を、僅差ですが採択して、それまでのダム建設促進の姿勢を大きく転換させた。これは大変大きな意味を持っている。

 3つめに、残念ながら今回、八代海の漁業関係者とは直接、懇談することはできませんでしたが、ダムの建設など河川の開発が流域だけでなく、海にまで大きな影響を与えていることがいま全国的に問題になっています。各地でも漁業者による上流域での植林などの取り組みが行われている。八代海の37漁協が環境アセスメントで影響がないことが確認されるまで、工事の中止を求める。昨日の漁民の方の言葉を借りれば、川と海とが心一つにして団結できる新しい局面が生まれているといいました。この3つの局面を地元のみなさんが闘いで切り開いた。やっぱり道理と大義がある闘いというのは、多くの住民の心を捉える、そこに確信を持って地元のみなさん、最後までがんばり抜いてほしい。われわれも国会の中で今度の調査をふまえて論戦を展開したいと、昨日の懇談でも確認をしあいました。

【いまこそダム建設の中止を】

 ダム事業の目的の破たんと巨額の財政負担から考えて、いまこそダム建設を中止すべきだと改めて痛感しました。国は1966年に、この川辺川ダムの計画を発表して以来、35年にわたって計画実施をねらってきた。いま、国土交通省はダムの建設目的を、一つは治水、2つ目に利水、発電、(洪水の)調整機能などをあげていますが、その目的はことごとく成り立たなくなっていることは明白です。上流部の山林の保水力の高まりで、ピーク時水量は小さくなっていますし、人吉など下流の河川改修も進んで、安全性も高まっている。それどころか、ダム建設によって被害が拡大するおそれさえ指摘をされています。

 今日、灌漑排水事業の対象地域である相良村の高原地区を視察しましたが、灌漑をしなくてもよい作物が作られているので、新たな水は必要でない、そういう農民が非常に多いということをあの茶畑をみて思いました。その根拠も明白だと思います。

 あの防霜、霜よけのファンですね。あれのかわりにスプリンクラーを、そうすれば水がいるじゃないかともいうけれども、そんなことをすれば、あの土壌の属性からいって、根腐れが起こると、お茶を作っている方から直接聞きました。水のいらない所に、あえて必要なんだ、必要なんだ、ということで、農民が望んでいないことを押しつけていることがよくわかりました。

 発電についても、ダム建設によって得られる発電量が、ダムによって水没、廃止される既存の発電所の発電量より少なくなるわけですから、あるいは洪水調整についても、計画の根拠とされた流水量が過大に算定されたということが指摘されています。

 事業費の当初計画350億円が、いまでは2650億円にふくれあがっている。これ自身膨大なムダ使いであります。

 今回の調査ではもう一つ、松本元熊本大学教授に同行していただいて、地質学の立場からダム建設予定地の大変な危険性についてのお話も聞きました。政府・国土交通省は事業が先にありきでなくて、事業目的を全面的に検証すること、ダム建設予定地の地質学上の危険を指摘する声にも耳を傾けて、いまこそダム建設中止の英断を下すべきだというふうに思います。

【水没予定地・五木村の復興について】

 最後に、水没予定地の五木村の問題です。五木村の村長と懇談をしまして、最後におっしゃった言葉が非常に印象的でした。「ダム建設が中止されようと行われようと、五木村民が払った犠牲、これに応える施策を国は責任を持って行ってほしい」と。これは当然のことだと思います。ダム建設計画によって、村民のなかに対立を生まれさせ、賛成の人も反対の人も、せっかくのどかな緑豊かな地域での和が破壊されて、殺伐とした状況を生んだ。ということを長い過去を振り返りながら村長さんはいっておられましたが、川辺川ダム建設が平和でのどかな五木村に無用の対立と混乱を持ち込んで、村政と村民にいやしがたい犠牲をもたらした。政府はそのことの反省にたって、五木村の再生と復興に全面的に責任をもつ必要がある。

 別れ際に村長からも、「どういうふうに五木村の再生振興はかったらいいか、共産党さんからもいい知恵があったら」といわれました。引き続きそのことについてもおおいに研究しようといいましたが、あそこは森林も豊かで、全国屈指の清流があるわけですし、貴重な動植物も生息している。そして五木の子守歌の継承など、文化的な条件があるわけですから、これらを十分に生かした林業や観光などの振興策を、地域の人たちの自主性を尊重しながら支援するようにすべきだと考えています。住宅に国産財、地元産財を使うことは国民の健康にとっても大事なことですし、農山村地域の振興にとっても非常に大事になっている。五木村に豊かに広がる森林を緑のダムとしての役割を発揮させる森林管理、地域の基幹産業として林業、木材産業の振興をはかることはとりわけ重要になっている。川辺川ダムの関連道路は、生活に必要な道路として早期に完成させる。ダム本体の建設を中心とする残りの事業費の一部を財源として、生活基盤の整備などを進めるべきだと思います。

 住民が望んだ事業でないうえに、様々な事情から受け入れざるを得なかった経緯からいっても、情勢の変化による中止の負担を地元にさせるのは筋が通らない。たとえ、ダムが中止されたたばあいでも補償金の返還を求めるべきでないことは当然ですし、今後の五木村の振興は、よく現地とも相談し我々も知恵をだしあいながら相談していきたいと考えます。

 以上ですが、2日間短い日程でしたが、多くの方々と直にふれることができて、大変有意義でした。われわれ国会議員団としては、まだ通常国会6月半ばまであるわけですから、今回の調査をふまえて、国会の場でも、さまざまな委員会で、あるいは本会議で、論戦を通じてただしていきたいし、地元の運動がいっそう高揚するように、協力しながら進めていきたいと考えています。

 「くまがわ下り」の富田社長は、地元の人は本当に人間がよくて和が保たれていたのに、団結や和まで破壊されるのは許せないとおっしゃっていました。政治的な立場如何を問わず日本の宝、世界の宝、川辺川、球磨川を守るということは大事な仕事だとしみじみ語っておられたのは印象的でした。

【記者からの質問に答えて】


記者〉 いま、共産党さんと民主党さんが川辺川については見直しを主張されていますが、政策協力的なものについてはどうするのか。

市田〉 今度の通常国会にあたって、予算の組み替え要求をやろうということで、野党4党の政策委員長レベルで、何回か煮詰めてきまして、書記局長、幹事長の会議でも合意をみました。その中には公共事業の削減というのが一項目入っていますし、ほかにも合意事項ありますが、一番大きかったのはそういう問題です。もちろん、民主党さんは、国ではそういいながら地方自治体では別の態度をとっている場合がありますが、こういう問題では大いに一致点での協力はやっていきたい。民主党さんにとどまらず、全国民的な課題ですし、他の問題で立場が違っても大いに一致点では国会内で協力共同を進めたいと思っています。

 鳩山さん自身が岩波新書で今度の本の中でも語っておられますが、国政ではね、自然破壊、環境破壊の浪費のダム見直すべきだといっているんですが、地方議員の部隊がそうなっていないのが苦労しているところだとおっしゃっていましたが、われわれは国政でも地方政治でも一貫した立場とっている党として大いにがんばりたいし、民主党さんが地方議会でもそういう立場に立たれることを望みたいと思っています。

記者〉 参院選の野党主導の政権が発足すれば、状況変化もありうるという見方をする人もいますが、連立とかどういうふうにお考えか。

市田〉 われわれいまの野党状況に2つの特徴があると思います。日本共産党以外の野党は自民党から分かれた党と、ついこの間まで自民党と連立を組んでいた、そういうしがらみがある党です。そういう党が、反自民、反自公保の旗を掲げはじめて、日本共産党とも共闘する。ずーっと続いてきた共産党を除くという政治が過去のものになった。これは日本の政治に新しい情勢が開けた大変大事な点だと思います。われわれ国会内での野党の共闘・協力というのは、これまでも強めてきましたし、今後も強めたいと思っています。同時に、政権という場合、政策の一致が大事。先々の遙か彼方の民主連合政府をどうするか以前の、いまの不況どうするのか、経済の状況どうするのかという問題をみましても、われわれ今、消費税の減税を主張していますが、大企業の一部、もちろん中小企業関係者、本音はともかく亀井静香さんまで消費税減税をいいだしているなかで、野党の中で消費税減税を言い出している党があるかというと、ないんです。

 ダム問題だけで連合政権というわけにはいきませんから。緊急に経済の建て直しをどうするのかも含まれてくるわけで、今野党の間で連合政権構想を4党で明確に打ち出すことは、政策的な不一致があるなかで、かえって国民にプラスにはならない。

 それぞれの党が自民党政治に変わるどういう政治を目指すのかということを、参議院選挙で国民に示しながら、それぞれの角度から自公保を追いつめる。参議院選挙で自公保が過半数を割った場合に、これは当然、総選挙ということになると思いますけれども、新しい状況が生まれれば、参議院選挙でも国民の審判ふまえて、おのずからどういう点が一致して、どういう点が不一致なのか明らかになるわけですから、今直ちに4党の野党連合政権という構想を打ち出すことは無理だと思います。

 政権に至らなくても今のダム問題なんかは、大いにほかの野党ともやっていける課題の一つ。大いに協力関係強化して参議院選挙の大きな焦点にしていきたい。

記者〉 共産党の川辺川についてのスタンスで新しい変化があるなら。

市田〉 スタンスには違いありませんが、やはり文書でみるのと直に生で聞くのとでは受け止め方が違います。たとえば切り崩しなどのえげつなさとか、それから土地改良事業を促進する際に、45年前に死んだおじいさんの名前の承諾書を、「もう川辺川ダムなくなるそうだ、だから判子をよこしなさい」と役場の職員がきて、炊事場のほうにいて、玄関口で役場の職員がそういうものだから、「ダムなくなるなら結構なことだ」と、判子を喜んで放り投げたら、それは同意書だった。こんなえげつないやり方ありますかと怒りの声がありました。これは文書でも知っていました。テレビでもやっていました。しかし、直接そういうことをやられた農民の方から話を聞きました。怒りで声を震わせていましたよ。

 実際に国会で質問するときに、扇さんが引き続き国土交通大臣をやるかどうか知りませんが、一回川辺川をみて、農民の声を聞いてきなさいという質問をできる。これは現地調査の強みです。そう言う意味で、文書で知っていたことが裏付けられたにとどまらない重さをもっている。いい知恵もいただきました。土地改良事業、平成13年で終わりそうにない。そうすると工期の延長をしないといけない。そうなると再び同意書をとれという運動できないのかという提起がありました。これは研究もし追及もしたい。漁民の切り崩し、多数派工作のために、現金(げんなま)が飛んでいるという話が漁民の方から出されましたが、もしやられているとすれば言語道断で、事実上の賄賂政治で許されない。政府としても目を開いて監視しなさいといいたい。

記者〉 ダム事業を止めると五木の生活再建策も止まるんですが、その辺が五木村長も困っているというような話ですが、ダムを止めても五木の生活再建に責任をもつという裏付けを日本共産党として持っているのか。

市田〉 これから詰めていく必要がある。村民が望んでもいないダムを造って、去るも地獄、残るも地獄という感じなんです。ダムが中止されても、ダムが強行されても本心からすれば困る。責任は村民のみなさんにないわけですから、そこは政治の責任で、政府の責任でダムが中止になった場合のさまざまな心配事を取り除くような、そういう追及をしていきたい。それは今後の運動と追及によると思います。

 「正調・五木の子守歌」を初めて聴きましたが、あの声は、あの五木村を残してくれという声に聞こえましたね。そんな感想でした。